久慈浜海水浴場を見下ろす高台で、スマートフォンを構えて海を撮影する利用者さんの後ろ姿
高台から海を撮影する利用者さん。動画やイラストの素材を求めて、この日は日立市・久慈浜海水浴場へ足をのばしました。

「海の素材を撮りたい」— 一言から始まった撮影会

夏が本番を迎える直前のことです。日々の制作活動のなかで、「海の素材を撮影したい」という意見があがりました。
作品づくりに使う写真や動画の素材は、いくらあっても足りません。せっかく撮るなら、綺麗な青空も一緒に収めたい。そんな思いから、天気の良い日を選んで出かけることにしました。

今回参加したのは、撮影に特に意欲のある2名の利用者さんです。人数を絞った理由は、単に「少なかったから」ではありません。少人数の撮影会なら、動ける場所も、待たずに撮れる時間も、ぐっと広がります。大人数だと、どうしても列や順番ができ、撮りたい瞬間を逃してしまうこともあります。けれど二人なら、気になった被写体にすぐ近づける。一人ひとりが自分のペースで被写体と向き合える。それが、この日の撮影会の設計でした。

向かったのは、日立市・久慈浜海水浴場

車で向かったのは、日立市久慈町にある久慈浜海水浴場。AWANAひたちなかの作業所からは、車でおよそ30分の距離です。
久慈川の河口近く、久慈漁港に隣接するこの海岸は、白い灯台と広い砂浜、そして遠浅の海が特徴で、夏には家族連れでにぎわう定番の行楽スポットです。海水浴場としての遊泳期間は例年7月中旬から8月中旬ごろ。つまり、私たちが訪れたのは、まさに海開きを目前に控えたタイミングでした。

夏休みには多くの人でにぎわう海岸も、平日ということでこの日はほぼ貸切。人の映り込みを気にすることなく、撮影に集中できる環境が整っていました。広い砂浜を独り占めするように、それぞれが思い思いの被写体を探し始めます。

芝生の広場に立つ白亜の日立灯台と、夏の青空
久慈浜のほど近く、古房地公園に立つ白亜の日立灯台。海と空を背景にしたランドマークも、撮影会の被写体のひとつになりました。

偶然の出会い — ウェディングフォトの花嫁さん

撮影を進めていると、思いがけない光景に出会いました。高台から砂浜を見下ろすと、真っ白なドレスをまとった花嫁さんと新郎さんの姿。この海岸で、ウェディングフォトの撮影が行われていたのです。
広い海と空を背景に写真を残す二人の姿は、それ自体がひとつの物語のよう。撮影に来た私たちにとっても、忘れられない一場面になりました。

高台から見下ろす久慈浜海水浴場。波打ち際にウェディングフォトを撮影する花嫁と新郎の小さな姿
青い海と白波の向こう、砂浜の左手に写るのはウェディングフォトの二人。偶然の出会いも、その場にいたからこそ残せた一枚です。

イラストの素材を求めて — 構図と、道すがらの被写体

参加した一人の利用者さんは、イラストの素材となる画像を撮影します。頭のなかには、あらかじめ考えてきた構図があります。海、空、砂浜の広がりを、思い描いたイメージに合わせて丁寧に切り取っていきました。

面白いのは、決めてきた構図だけで終わらないことです。歩いていると、流木、砂浜に根を張る植物、道の途中で綺麗に咲いた百合など、思いがけない被写体が次々と目に飛び込んできます。そのひとつひとつを、逃さずカメラに収めていきます。予定になかった出会いこそが、作品に厚みを与えてくれます。

砂浜から芽を出したばかりの小さな植物と、背景にぼやける夏の海
砂の上で光と影を浴びる、小さな芽。ローアングルで海を背景に入れると、たった一本の植物にも臨場感が生まれます。
夏草を背に砂浜へ横たわる、白くさらされた大きな流木
波に運ばれ、陽と潮に洗われた流木。曲線や質感そのものが、イラストや背景の素材として活きてきます。
海辺の草むらに咲く、オレンジ色の斑点が入った百合の花のクローズアップ
道の途中でみつけた、鮮やかな百合。あらかじめ考えた構図の外側で出会う被写体も、撮影会ならではの収穫です。

さらに、より臨場感のある素材を撮るために、立ち止まって撮るだけでなく、歩きながらシャッターを切るなど、撮り方そのものにも工夫を凝らしていました。同じ砂浜でも、視点の高さや歩くリズムひとつで、写り方はまるで変わります。試しながら手を動かすうちに、「こう撮ればいい」という感覚がその場で育っていきました。

もう一人は、海を楽しむ

もう一人の利用者さんは、SNS(インスタグラム)にアップする動画の素材を集めます。波の音、光の反射、寄せては返す白波。動画ならではの素材を、ていねいに記録していきました。

ですが……本当の目的は、海を楽しむことでした。日差しは強いけれど、波打ち際に足をつけると、水は冷たく気持ちいい。波打ち際でしばらく立ち止まり、ただ海を眺める時間。撮ることと、感じること。そのどちらも、この日の大切な過ごし方でした。
これから始まる夏に向けて、良いアイデアのインプットができたのではないでしょうか。

波打ち際に立ち、青空と海に向かって片手を上げる利用者さんの後ろ姿
波打ち際で、海に向かってポーズをひとつ。素材を集めることと、夏の海を全身で味わうこと。この日はどちらも叶いました。

B型作業所で「写真を撮る」ということ

撮影会は、ただのレクリエーションではありません。AWANAひたちなかでは、動画編集やイラスト制作など、創作を中心とした活動を行っています。写真を撮ることは、その創作の一番はじめの工程 — つまり「素材を集める」という、れっきとした作業です。ここで集めた素材が、後日の編集やイラストに姿を変えていきます。今日撮った一枚の流木が、数週間後にはイラストの背景の一部になっているかもしれません。撮る前の段階から、完成する作品のことを思い描いておく。その視点を持てるようになると、外出そのものが制作の一部として意味を帯びてきます。

屋外での撮影には、室内の作業だけでは得られない価値もあります。決めてきた構図と、偶然の出会い。そのあいだで手を動かすうちに、「自分はこういうものを撮りたかったのだ」という気づきが生まれます。強い日差し、冷たい波、潮の匂いといった五感のインプットは、そのまま次の作品の栄養になります。
そして何より、「どう撮るか」を自分で選び、試し、決めていく体験そのものが、一人ひとりの得意なことや興味の輪郭を、少しずつはっきりさせてくれます。

参加は希望者のみ — それぞれのペースで

今回の撮影会も、参加の希望を募るところから始まりました。声をかけると、「暑さが心配……」「試験が近いので勉強に集中したい」といった理由で、参加を見送る利用者さんもいました。
それでまったく問題ありません。撮影会はあくまで希望者のみの活動で、不参加でも構わないからです。海が好きな人もいれば、静かな室内で作業に集中したい人もいる。その日その日の体調や気分、事情に合わせて、それぞれの方に合った過ごし方を選んでいただけるようにしています。

「いきなり外に出るのは少し不安」という方も、まずは室内での作業からゆっくり始められます。慣れてきて、行ってみたいと思えたときに、次の撮影会に加われば十分です。帰りの車内では、早くも次の撮影会の話題で盛り上がっていました。次はどこへ、何を撮りに行こうか。その計画も、どうぞ楽しみにお待ちください。

AWANAひたちなかの活動について

AWANAひたちなかは、ひたちなか市・勝田駅周辺で、動画編集、作曲、アナログイラスト、デジタルイラストなど、創作を中心とした活動を行う就労継続支援B型事業所です。
今回のような外出での撮影会は、普段の制作に使う素材を集める機会であると同時に、季節を感じ、気分を切り替える時間でもあります。利用者さんそれぞれのペースに合わせて活動しているので、「創作は初めて」「外出は少し不安」という方も、まずは見学からお気軽にご相談ください。

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参考情報

最終確認日: 2026年7月8日

※本記事に掲載している写真は、撮影時に本人の許諾を得て撮影・掲載しています。掲載の取り下げをご希望の場合は、AWANAひたちなかまでお問い合わせください。